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ログマニアックス

日々学んだこと、気づいたことをメモ代わりに残していければ。カバー範囲は割と広めです。

「現場力」を鍛える

先日とある研修で読んだこの本が面白かったので、メモ。

現場論: 「非凡な現場」をつくる論理と実践

現場論: 「非凡な現場」をつくる論理と実践

 

 いつもながら読んだのはキンドル版だけど。

現場論―「非凡な現場」をつくる論理と実践

現場論―「非凡な現場」をつくる論理と実践

 

ひとことでいう以下のことをいろいろ事例を伴って説明しています

現場力を活かす自律分散型組織をつくるのはとても手間暇がかかる面倒なことだということを自覚し、経営としての覚悟をもった取り組みを行うことがなにより肝心なのである 

 

事件は現場で起きている

まぁ、湾岸署的な。まずは以下の引用から

最近、「OKY」という言葉をよく耳にするようになった。  「O(お前が)K(来て)Y(やってみろ)」の略だ。中国など新興国の最前線で奮闘する日系企業の現地駐在員たちが、現地の事情も理解せずに無理難題を押し付けてくる本社に対する怒りやもどかしさを表現した隠語である

まさに前職で中国で新規事業を立ち上げていた時、おんなじ思いを抱いていたことがある。遠く離れた東京からは中国でのリソース・スキル・情報の不足は見えないし、わからない。

わかるのはただ、うまく行っているかわからない不安と成果が見えない不満であり、その事自体は自然ではあるけれど、まったくそれだけでは生産的な動きにはつながらない。

本書は「現場」というひとことで片付けられがちな業務を反復性と非同質性という要素で整理しています。

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そして、その実現に伴う、「刹那的な達成感」という麻薬が現場にはびこることが、改善を伴う、良好な業務環境を損なっているのです。

そのリスクをキチンをウォッチしながら、地に足をつけた業務を進めていくことが必要であり、その事例としてトヨタやデンソー、無印良品を取り上げている。

また、現場力強化のアンチテーゼとして「戦略」組織に危うさも述べています。

私のこれまでの経験と感覚にもとづけば、「○○戦略部」という部門の数が多いほどたいした会社ではない。机にしがみつき、インターネットで手抜きの情報収集に没頭し、机上の分析に終始し、会議室で実体のない議論に明け暮れる。そんなことを繰り返しても、よい戦略など生まれるはずがない

よい「現場」を作る力

さて、現場力というものを定義する際に以下のように考えているようです。

  • 新しいものを生み出す力
  • よりよくする能力
  • 保つ能力

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上記の3つの要素を積み上げていくことが良好な「現場」を作ることになりそうです。

個人的にはこの辺りはトヨタウェイの考え方とほぼ一緒ですが、より抽象度の高い整理を目指しているようですね。

トヨタ生産方式

トヨタ生産方式

 

この本が少し古いですが、めちゃくちゃおもしろいのでオススメ。

そして、まさに改善の取り組みとして

マラソンのように持久力を問われるのが本当の改善である。「いつまでも続く」(relentless)ことこそが、改善の本質である 

としており、その例としてデンソーを取り上げています。

よい「現場」を作る経営

実際に良い現場を維持・改善していくためには上と下からの両方のアプローチを同時に進めていく必要があります。

これを図示したのが以下のHモデルです。

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現場を強化する仕組とエンカレッジする経営の掛け合わせで改善活動を続けて「成功体験」を積む。積まれた「成功体験」が新たな戦略資源となり、同時に企業文化を作り上げる。この積み上げのサイクルを多数回していくことが企業の地力の向上につながっていくのかもしれません。

実際の事例としてはヤマト運輸を取り上げています。ヤマト運輸といえば強いトップによるビジョナリーな経営も有名ですが、現場力が強いことも特色です。

小倉昌男 経営学

小倉昌男 経営学

 

 この本は読み物としても非常に面白いです。

感想:現場を作る≒経営

著者の遠藤さんは日本の戦略コンサルタントの先駆けで、ビジネス管理の概念を本格的に国内で広げた第一人者でMBAホルダーです。そのため、国内外でのセオリーと実際の企業での成功例を反映しながら読みやすくまとめています。

また、企業人で即わかりやすいように図版・構成に至るまで考えぬいた形になっているのも読みやすくて好印象です。関連書もたくさん紹介されているので、この本を道標にいろいろな本を読み漁るというのも一つの方向ですね。

一方で、いわゆる「現場力が高い」と言われている複数の企業で働いた自分の経験として、ファストファッションナンバーワンのあの企業と人材関連総合メディア企業のあの会社が、カルチャーは180度の違いがあるにもかかわらず、どちらも強い現場力と実行力を維持している構造はいずれもH字型のフレームワークで説明できます。

つまり、強いカリスマ創業者によるトップダウンと労働集約的でマニュアル的な面を持つ店舗・スタッフ組織から作り上げた現場と、「圧倒的な当事者意識」「お前は何したいの」といった信条を文化的に強く維持していることから作り上げた現場が、「最強の改善組織」という意味では同質な成果を生み出していることは非常に興味部会ですね。

また、この現場構築のためのH型フレームは普通に組織レベルでの使える元ネタとして組織体制を作ったりするときの材料で使ってみたいと思います