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ログマニアックス

日々学んだこと、気づいたことをメモ代わりに残していければ。カバー範囲は割と広めです。

「広告の終焉」とAd:Tech Tokyo 参加の雑感報告

情報

先日参加してきたAd:Tech Tokyo。
すでにいくつかの記事をアップさせていただきましたが、
改めて感じた雑感を含め、
参加したセッションの振り返りをまとめてみました。

特にIBMが2年前に発表した「広告の終焉」論文を読んだ上で、
参加すると非常に興味深く参加できたので、その紹介も含めて紹介します。

Ad:Tech Tokyoとは

公式サイトによると、

マーケティングとITテクノロジーに特化した世界最大級のカンファレンス“ad:tech”では国内だけでなく、海外からも参加者を招き、グローバルな視点でマーケティングの未来を模索します。“ad:tech Tokyo”は、世界のマーケティング事例や最新の技術・サービスを学ぶと共に、日本の持つ素晴らしい手法や技術を世界に向けてアピールする場にもなります。新しい時代の広告・コミュニケーション手法の開発が様々な形で議論をかわし、“ad:tech Tokyo”を通じて日本と世界のマーケティング従事者が意見や知識、技術を交換をしながら新たな可能性を広げていくこと_それが“ad:tech Tokyo”です。

とのことですが、
簡単にいうと

インターネットマーケティングに関して、広告代理店とクライアント、ベンダーとユーザーが自由に議論をするイベント

です。世界各地で実施されてきた同名のカンファレンスの東京版で、北京でも開催されます。
ただ、実際には、

電通博報堂などの大手総合代理店を中心にネット媒体の商品が議論された場

という意味あいが濃く、
広告代理店や媒体社からのセッションを中心に参加したこともあり、
テクノロジーを中心にした議論が少なかった印象を持ちました。

参加したセッションの位置づけ

2日目のみでの参加を行ったのですが、
参加したセッションを広告のバリューチェーンの中でマッピングして俯瞰してみました。

スライド3

広告が生まれてから死ぬまでのプロセスをバリューチェーンにおくと、
クライアントから代理店、企画、制作、配信、消費者、
とプレイヤーが違う各プロセスが存在します。

たとえば、
CNNのCGMの取り組みを扱った、「デジタル・ブロードキャスティング戦略」は
制作から消費者のプロセスに、
omnitureのウェブサイトの最適化に関する「データを活用したデジタル戦略の最適化」は
クライアントから配信までのプロセスに関連が深いと考えられます。

特にこの中でも
「ブランド担当者の本音」と「マーケタータレントの育成」
この二つのセッションに注目しました。

ブランド担当者の本音

このセッションではナショナルクライアントの広告宣伝担当部署に対して、
大手代理店に望んでいる姿勢に関する議論が行われました。

スライド4

 

本田技研はもともと自社の広報に力を入れているだけに
かなり厳し目の指摘。

代理店の提案する施策の50%は役に立たない、とバッサリと切り捨てた上で、
自社メディアでROIの測定を実施していると事例を紹介。

image

これはあるミニバンのプロモーションの例だけれど、
CMを入れることとウェブサイトへのアクセスの親和性を紹介しています。
クライアントがうまく情報を使うことで代理店の価値は小さくなっているという指摘でした。

それに対して、ADKの井上氏は、個人の見解だとしたうえで、
今まではメディア・媒体選定を代理店の便益で実施していた面がある。
と反省の弁。

一方で、クライアントに対しては専門家を擁したチームとしてあたることで、
代理店としての価値を出したいとしていました。

また、日清の三宅氏はFreedomキャンペーンの振り返りを通し、

FREEDOMの成功の背景には代理店とブランドの協働があった

としている。クライアントの内部には持ちづらい、プロフェッショナルな人材を
広告代理店の中で設けていきたいとのことです。

最後に、インテグレートの藤田さんは「ヨルカジ」のプロモーションの例を通し、
クライアントに対する広告代理店の価値、として
広告を超えた「脱広告・超PR」を目指したいとしていました。
ただこれが、クライアントのニーズに本当にあっているのか、というのはなんとも...

全体としては、一部のクライアントが進化を続けているのに対して、
広告代理店は努力しているものの、まだまだ噛み合っていない。
そんな印象を受けました。

マーケタータレントの育成

タイトルから実はもっとも期待していたパネルディスカッションでした。
それだけに、内容が広告代理店の内輪の話に終始してしまったのは残念です。

スライド7

マーケットタレントを必要としているのはもはや代理店ではありません。
事業会社がようやくマーケティングに目覚めかけたのに、
まだまだ、人材が欠けております。

とはいえ、その供給源となると、個人的には見ていた、
代理店での育成の生みの苦しみは「あるある…」と思いながらの
見方になります。

上記の図のように代理店の人材はデジタル・アナログ、あるいは右脳・左脳
という分類で4象限に分かれるという。

トラディッショナルVSデジタル、右脳VS左脳ではないのだろうけれど、
それぞれの領域におけるタイプが交わることが少ない、という印象を持ちました。

おそらくは各人が自分を規定したうえで、それ以外の種別を
明確に他の人種だと認識しているのかもしれません。

一方で、クライアントの宣伝部もひどい有様、
参加者の東芝の荒井さんによると、広告部は以前、「報告部」といわれていたそう。

つまり、
代理店の作ったプランに乗っかり、その結果を上に報告するだけの部署。
当然のことだが、新しい取り組みはうけがよくないのでやらない。
これでは人材は育ちようがないのは現実…

代理店が一方で人材育成のキーワードとして考えているのは「OPEN」な
育成環境。

簡単にいってしまえば広告主にとって必要な人材を作る。
それは単体の専門性ではなく、シナリオを書ける人間。
その手段としては、グループ会社のネット事業部に配属させてもむ、という
のが打ち手の少なさをあらわしているようには考えられます。

この状況は中小代理店や異業種にとってはネット広告宣伝に関して
イニシアチブを取れる大チャンスだと感じました。

参加した雑感

繰り返してですが、Ad techについては、とにかく総合代理店の人が多かった
と感じました。まぁ、スポンサーなので当たり前かもしれませんが。

また、各セッションがパネルディスカッションとして
設定されていましたが、実際にはミニプレゼンが4つある形式のものが多く、
もっと議論があればよかったと思います。

僕が働いている会社に関して思うと、
出展企業と比較した場合に、そんなに遅れているわけではないと感じました。
とはいえ、別に他社に比べ、すぐれているわけでもない、という
立ち位置の認識にはよい機会でした。
次回にはうちからの参加者・講演者がもっと多くてもいいのでは?

あとは全体的な広告業界について。

広告代理店の方は、以前の高利益体質を懐古するシーンが多かったと思います。
それが悪化したのは、景況の悪化によるところと、成果オリエンティッドの傾向からと
両方なのだと思いますが、
周辺環境の進化やクライアントからのニーズに
代理店が苦しんでいるのが感じられました。

「広告モデルの終焉とはじまり」

上記のタイトルで2007年末にIBMが出した広告業界の今後の5年間の展望があります。
オープン化、ソーシャル化を背景に各プレイヤーの進化の必要性を説いていました。

これによると今後の業界の将来に関する4つのシナリオは以下の通り、

  • 継続的進化
    • 伝統的なマス広告の進化。代理店・配信事業者の立ち位置は変わらない
  • オープンな流通
    • 消費者視点での変化はほとんどない。一方で代理店の立場やマス広告が相対的に小さくなる
  • 消費者による選択
    • 消費者が自分のニーズにしたがった広告を選択でき、広告視聴が通貨のような意味をもつ
  • 進化した広告市場

2007年からほぼ2年たった今、この予測がどれだけあたっているでしょうか。

スライド12

Ad:Techで見えた視点はオープンな流通に向けた流れのようです。
スライド13

 

広告から広告会社の影響力がちいさくなる一方、
クライアントが自由に広告の価値を決めるシーンが増えています。

また、広告の単価が基本的には安価になり、ROIでそれが左右される動きは
これからも活発になっていくでしょう。

「進化した広告市場」といった、
ユーザー主体の動きは今回のAd:Techではあまり紹介されていなかったようです。
これが実際には日本では起きていないのか、あるいは起きることはないのか、
に関しては継続して議論することなのだと思います。

また、カンファレンスに参加した際には随時レポートを共有いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。